放射線関係の単位について

まず、東北地方太平洋沖地震による震災被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
とは申せ、あまりに甚大な被害にどう申し上げてよいものか、正直わかりません。ただ、なくなられた方のご冥福を、大切な方を失った方に心よりお悔やみを、命あっても避難所等で不自由な暮らしをなさっている方々にはとにかく乗り切っていただきたく、祈るばかりです。

早速ですが、当サイトのアクセス記録を調べますと、震災以降、放射線関係の単位に関する問い合わせが急増しております。おそらく、テレビ等で報道される値を調べるためのアクセスと推察しますが、申し訳ありませんが、当方は純粋に物理量としての単位の換算を取り扱うだけですので、あまり参考にあることも少ないかと思います。とはいえ、報道ではいささか誤解を招く用法なども目立ちますので、蛇足とは思いつつ、説明を加えさせていただきたいと思います。当方も、決して専門家ではなく、10年以上前に大学の講義で受講した記憶を頼りに、ネットで情報を集めて書いている程度でして、ほんのご参考になさってください。随時改訂しようと思いますので、なにか間違いや、補足情報等ありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

シーベルトについて

記号では[Sv]。人などが受ける放射線の総量の当量をあらわします。
ただし、報道等では「シーベルト毎時」や「毎時○○シーベルト」のことを「シーベルト」と言っていることが多いので、注意が必要です。
当量というのは、放射線にはいくつか種類があって、種類ごとに人体への影響が違うので、その影響の大きさに応じて補正した値という意味です。
なお、1シーベルトはとても大きいので、普通はmSv(ミリシーベルト)かμSv(マイクロシーベルト)を用います。
(1Sv=1,000mSv / 1mSv =1,000μSv /1Sv = 1,000,000μSv)
一般には、1年間に1[mSV](1ミリシーベルト)が、一般人の上限とされています。ただし、これを超えると直ちに危険になるという意味ではありません。「致死量」が比較的はっきりとわかる毒物などと異なり、放射線の影響(特に、長期の影響)というのは「確率」でしか評価できないので、一時的にこれを超えても、すぐに生命に危険があるというわけでもありません。
たとえば、上記の基準(毎年1mSv)は、生涯死亡率(おおざっぱに言うと、この上限の放射線を生まれてから一生涯浴び続けると死ぬ確率)が、1万人に1一人くらいと推計されることによるとのこと。実際、自然の放射線による線量当量が1mSv程度であるとのことです。
【参考ページ】原子力百科事典ATOMICA
<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護の基礎
<タイトル>ICRP勧告(1990年)による個人の線量限度の考え (09-04-01-08)

シーベルト毎時について

記号では[Sv/h]。人などが1時間あたりに受ける線量当量を表します。「毎時○○シーベルト」と言うのも同じ。実際には、人がそこにいるとそれくらいの線量当量を受ける放射線の強さ、という意味で使うことが多いようです。
逆に言うと、人がその放射線により受ける影響を評価しようとすると、むしろ、どれだけの時間その放射線にさらされたか(被曝したか)というのが問題になります。たとえば、放射線の強さが1マイクロシーベルト毎時であっても、1年間浴び続けると8760マイクロシーベルト(約9ミリシーベルト)の線量当量になりますが、100マイクロシーベルト毎時であっても30分であれば50マイクロシーベルト(0.05ミリシーベルト)になります。

グレイとシーベルトについて

シーベルトが、放射線の種類ごとの影響度を考慮した「線量当量」であるのに対して、グレイは「吸収線量」といい、放射線の種類によらないものです。ベータ線やガンマ線では、値は同じになりますが、それ以外の放射線では決まった係数で異なります。

シーベルトとベクレルについて

シーベルトは放射線による被曝(体外被曝)の被曝量を表す単位ですが、放射線を出すモトである放射性物質の、放射線を放出する力(放射能)を表す単位としては「ベクレル」(Bq)が使用されます。少々乱暴な言い方をすると、要は「放射能」の総量を表すものと思っていただいていいと思います。
具体的に言うと、放射線が「ある」ところに「いる」ことで、放射線を受ける(被曝する)ことを「体外被曝」あるいは「外部被曝」と申しまして、この被曝量として「シーベルト」を用います。一方、放射性物質を食べ物や飲み物、あるいは呼吸する空気などから体内に取り込んでしまうことを「内部被曝」と申しまして、食べ物や水に含まれる放射性物質の量や、取り込んだ放射性物質の放射能の大小を評価するに当たっては「ベクレル」が使用されます。一般にはベクレル毎キログラム[Bq/kg]、ベクレル毎リットル[Bq/L]などの形で使用します。
体内被曝の場合、取り込んだ放射性物質の量も大事ですが、その放射性物質の種類などにより影響は異なる(その放射性物質が排出されやすいか、半減期はどのくらいか、などによる)ので、一概に基準はないようですが、報道によると、食品や飲料については、暫定規制値が定められたようです。
なお、シーベルトとは逆に1ベクレルは非常に小さな量ですので、キロベクレル[kBq]やメガベクレル[MBq]といった使い方もよくされます。たとえば、普通の人間の体内にある程度のごく微量の放射能でも7〜8,000ベクレル程度あるとされており、ベクレルの数値だけ聞くとびっくりしてしまいますが、それは1ベクレルが極端に小さな値であるからです。
(1kBq=1,000Bq / 1MBq=1,000kBq=1,000,000Bq)

CPMについて

放射線を計測するガイガーカウンターの計測値で、Count Per Minute の略です。計器が放射線を検出した回数を分単位で表したもので、直接、放射線量や被曝量を表すものではありません。

その他参考URL
新潟県立中央病院 放射線被曝に関するQ&A
国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護の考え方 (文部科学省 放射線安全規制検討会航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ(第2回) 配付資料より)
福島県原子力広報委員会「ウランちゃんのなるほどアトム教室」

2011.3.20 内村知行
2011.3.20 「シーベルトとベクレルについて」を一部修正
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